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ガコン、と重い音をたて、また新たな"ゴミ"がゴミ箱に捨てられる。
三年前から同棲している彼氏は、よく物を捨てる。
部屋にあまり物を置きたくない派なのかとも思ったが、どうやらそれは違うらしい。きっと彼は一度でも、一瞬でも「いらない」と思ったら捨てるのでは無いかと思う。
私がくだらないものを拾ってきたとき、買ってきたとき、彼は最初、なにも言わない。
そっとこちらを伺ってくる。飽きやすい私はすぐに使わなくなるからだ。
そうしてしばらく経って、私が新しいものに目移りし始めると、彼は一度だけ「いらない?」と聞く。
それに「まだいる。」と答えようとするのだが、彼が持っているとソレはなんだか色あせて見えてきて、つい頷いてしまうのだ。
「これ、捨てるよ?」
今日も彼は一人忙しそうに部屋をいったりきたりしている。
私はそれを布団にくるまりながらただ眺める。私が拾ってきた片方しかないピアスを手に取り、迷いもせずにゴミ箱に入れる彼は黙々としている。なのに捨てるたびに増えていく眉間のしわからはどこか苦しさのようなものも見え隠れしているのだから不思議だ。
「辛いならやらなきゃいいのに。」
ぼそり、と呟いた声は彼がゴミ袋を開く音に掻き消された。
一昨日拾った傘や昨日拾ったボール、キャップのないボールペンたちが彼の平べったい手によって燃える、燃えない、リサイクルにきちんとわけられて袋に入れられる。
骨の抜かれた黒い傘の取っ手がぬらりと光っていたのが、彼の青白い手に掴まれ、光が消える。
じっとそれを見つめていると、視線に気付いた彼がこちらに目を向ける。
「・・・どうしたの?欲しい?」
これ壊れてるよ?と言う彼の手に傘は力なくぶら下がっている。
「んーん・・・」
いらない、と言うと彼はちょっと驚いたような顔をした後、わかったと呟き傘を袋に入れた。
「あとは・・・」
彼がふと零した言葉が耳に入り、さわりと走った悪寒に怖くなり布団にもぐって息をひそめた。彼の匂いのする布団の中で身を丸めて小さくなる。
そっと布団の端から彼を盗み見ると白い手でゴミ袋を持ち部屋を出て行く所だった。
バタン、とドアが重く閉まる音がして、私は詰めていた息を吐き出し、目をつむった。
こわい、あの手が。
布団をかき寄せて胸の鼓動を抑えるように自分の身体を抱きしめる。
隠れなくちゃいけない。
あの"ゴミ"たちのように捨てられないために。
END