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最期:前編

2012-02-24 00:09

SilverSoul 版権です。

勝手に
土方の最期を書いてます。前編。
打ち込みおわらなかったしw
明日後編うpします。

カップリング要素はなし。

近藤さん、沖田は亡くなってます。

函館五稜郭の戦いとか、弁天台場とか出てきます。
史実とは全く異なりますので、注意。

それでは、お気を付けて。

 先程の銃弾で親指辺りが爆ぜたのであろう、右足を踏み出すごとに激痛がはしり、靴に空いた穴からど黒い赤が溢れ出る。
 すぐに手当をうけるようにと喚く部下を殴ることで黙らせる。

 
 感覚がなくなるより、痛みが有る方がいい。
 進んでいるかどうか解らないのはもう嫌だ。
 

 お節介な隊員が教えたのであろう、山崎が後方から銃弾をくぐり抜けながらやってくるのが見えた。怒っているようにも見える山崎に苦笑いしつつ足を止め、木の後ろへと身を滑り込ませる。時折銃弾が木の皮を弾き飛ばすのが鬱陶しい。

 刀の柄に手をかけると血で滑り、思わず笑った。腕をえぐった傷跡から血が滴っていた。何が痛みがある方が良い、だ。もう既にバカになってやがる。
 

 硝煙で薄汚れたスカーフを首から乱暴に取り、二の腕をギリリと締めた。口に銜えた布からは炭のような味がして喉が軋む。左手から血が引いていくのを見ていると、いつの間にやら山崎が隣にいた。山崎は俺の腕と足を二、三度見た後、顔を歪め何事か呟いた。
 

 なにが言いたいのか解らなかった訳ではないが、銃の声で聞こえなかったかのように振る舞い、静かに刀を抜くと、山崎は酷く傷ついた顔をしてから俯いた。
 

 その黒いつむじに向かって静かに呼びかけると、わずかに身じろぎしこちらへ瞳を向けた。銃声が鼓膜を震わせ、鬱陶しい。それでも山崎には届いたようで、縋るようにこちらを見てくる。
 その視線を感じながら、手にした刀を自信の首元へと持っていき、肩に付くほどの長さになってしまっていた髪を切り落とす。
 山崎の口が何かをかたどった気がしたが、それに構わず切り落とした髪を束ねて差し出した。
 

 「山崎、頼まれてくれないか。」
 

 口調こそ哀願するようなものだが、それはれっきとした命令であった。
 鋭い男はその意図に気付き、目を見開いて彼には珍しくきっぱりと首を横に振った。じり、と焼けるような瞳でこちらを睨み付けてくる山崎に、なんだか親のような気持ちで微笑ましく見つめてしまう。
 生意気な目ぇしやがって。
 煙と塵を含んだ男の髪をがしがしと撫でつけ、狼狽える顔の横で繰り返す。
 

 「山崎…頼むよ」
 

 自分でも情けない声が零れてしまったと思い、女々しくなったもんだと奥歯を噛みしめた。
 とうの昔にあっちに行ってしまったクソガキにバカにされているような気がしてならない。きっとその隣ではあの人がバカみたいな顔して笑っているのだ。「トシも丸くなったもんだな。」なんて。誰の所為だと思ってんだか。
 俺がしばし思考を飛ばしていると、山崎がそっと俺の切り落とした髪を受け取った。
 

 「…副長はひどいお人だ。」
 

 痛々しい笑みで山崎が笑う。
 すまん、と謝ると、「やめてくださいよ、気持ち悪い」なんてまた笑ってから、受け取った髪を懐に入れていた紙に包み、しまい込んだ。
 その赤く汚れた指先が、気の毒なぐらい震えているのが見えて、思わずもう一度謝罪が口を突いて出る。
 その言葉に山崎はもう一度口を開いた。
 

 「本当に…本当にひどいお人ですよ。」
 

 拝命いたします、副長、と恭(うやうや)しくも見える礼節をもって俺の足元に跪(ひざまず)いてみせた。
 

 「…お前もなかなかだよ。」
 

 「何年あなたの傍に居たと思ってるんですか。」
 

 にやり、と口元を歪めた山崎の目元が光っているように見えて、思わず後ろを向こうとする山崎の肩を掴もうと手を延ばす。
 

 「土方さん、」
 

 銃弾が掠めたのか、ほつれてしまっている肩口に右手が触れそうになった時、山崎が不意に声を張り上げた。
 俺はそっと右腕を下ろし、ぎちり、とその手の平を握りしめた。
 

 「嫌な男だよ、お前は。」
 

 俺の呟いた言葉に山崎がふっと自嘲気味に笑う。
 

 「土方さん…どうか、」
 

 その後、山崎は何かを口ごもり、喉の奥からひねり出したような掠れた声で呟く。
 

 「どうか…また今度。」
 

 上司にかける言葉かよ、少し笑ってしまうが、その言葉に隠された意図に、あいつが隠したその言葉に気付かない筈がない。
 

 「…あぁ、」
 

 それきり黙り込む俺を背に、山崎は駆け出す。その背が悲しげに丸まってしまっているが目に入り、思わず舌打ちを零す。
 馬鹿野郎、しゃんと走れ。
 そう思ったのが届いたのか、山崎はすぐに背筋を伸ばし、暗闇の中へと溶け込んでいった。俺らしくもなく、その背中を見つめてしまっていたことに苦笑いが零れる。
 

 「副長!弁天台場で真選組が孤立しているようです!」
 

 部下の島田が駆け寄ってきて報告する。
 数少なくなってしまった真選組、今では陸軍奉行並になってしまった俺は、もう直接指揮をとることすら難しくなってしまっていた。
 

 「副長、どうされますか。」
 

 島田の瞳は、静かに、だが奥は爛々と輝いていた。何一つ疑っていない、真っ直ぐな目。
 

 「…決まってんだろ。」
 

 俺の隣で、茶髪の幼い顔のガキが「そうでなくちゃねィ」と笑い、その傍ではガタイの良いゴリラ顔の男が豪快に笑って俺の肩を叩いたような気がした。



 

 

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